asagao’s blog

asagaoの観察日記。

モンテ・クリスト伯 読書メモ11

モレル氏の嘆願。

ナポレオンの百日政治。
エルバ島を脱出したナポレオンによる、僅かな期間の支配。この情況の変化を逃さず、モレル氏はダンテスの為に嘆願を繰り返す。
敬われる立場の雇い主が、いわば雇い人の為に恥を忍んで頭を下げる。
この時代に、モレル氏に破格の扱いをされているダンテス。
モレル氏の人としてやむにやまれぬ心情による、勇気の行動。
誰もが自分を裏切ったと思っていたダンテスが、脱獄後に只一人恩義を感じた人物。

商売人には珍しい、人としての温かみを持ち合わせた人物。

モレル氏の嘆願に、白々しく受け答えるヴィルフォール

「すなわち教養ある人間と庶民とを区別するところの、あの冷然たる礼儀正しさ」※1

状況が一変したことによる、ダンテスの罪状がむしろ、賞賛されてもおかしくない事実となった点で、モレル氏は自信を持っていたのだが、

「ヴィルフォールの、面上にむなしく恐怖の色を求めていたモレルは、それがぜんぜん認められないとなると、今度は、そこにただ親切だけしか見出ださなかった。」※2

人として優れた行いをしていながら、ここも洞察力の欠如により悲劇を招いている。

そして、殊更に親切な提案、親切な段取り、それによってヴィルフォールを完全に信頼したモレル氏は、ついにダンテス救出の機会を失ってしまう。

異常に親切な悪人。
それは、自分の悪事を隠すための策に過ぎない。

相手を信頼させ、動きを封じる。


油断させ、信頼させ、最後に裏切る。それは、人として許されない事だと思う。


モレル氏が、牢獄のダンテスを思いやる言葉を呟いたとき、

「ヴィルフォールは、その囚人が、沈黙と暗黒のなかで、自分を呪っているであろうことを考えてぞっとした。」※3


悪事を働くものは、墓石を押し上げいつか復讐にやってくる虐げられた者の幻影に怯える人生を歩む事になる。

※1,2,3,共にアレクサンドル・デュマ作、山内義雄訳、モンテ・クリスト伯一より

モンテ・クリスト伯〈1〉 (岩波文庫)

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