asagao’s blog

日記と雑記、読書メモは個人的感想でネタバレ含みます。

モンテ・クリスト伯 読書メモ22

モレル氏の部屋に、悲しみの訪れ。

騒がしい人々の足音と共に、恐れていた知らせが届く。

船が沈んだ知らせだ。

しかし、モレル氏は神に感謝する。
乗組員は全員無事だった。

「ありがたい!損害はわたし一人ですんだのだ。」※1

破産を確定させる知らせに対して、かくも優しき船主だ。ダンテスの目蓋は涙にしめる。

この場面は何度読んでも胸にくるものがある。
私の目蓋も湿るのだ。

乗組員からファラオン号が沈むときの話を聞く。
沈み行く船のなかで水を汲み出すポンプを動かす。
船長は銃を手にして乗組員に指示を出す。
ポンプを離れるな!離れるなら撃つぞと。
船長の真意を知る乗組員は奮起する。

「まっとうな理屈くらい元気にするものはありませんな。」※2

諦めるな!いかなる時も。

またもや、デュマのメッセージだ。私はそう思う。

沈み行く船に怯え逃げ出す前に、やけになって投げ出す前に、死を覚悟してやれるだけやってみろ!
そんな荒っぽい、しかし「まっとうな理屈」で船長は船を守ろうとする。

そして、やるだけやったあと船長は乗組員の命を優先し船を離れた。直後に船が沈んだ。

その話を聞いたモレル氏の称賛。その対価を払えないことを詫びる。

船員は大金を辞退する。僅かでいいと皆で相談し申し出る。

商売人にはなかった人間らしさが、船員にはしっかりとあり胸が熱くなる。

教養とは何だ。
地位とは何だ。
身分とは。

本当の庶民のなかに、ありのままの優しさや思いやり、あたたかさがある。

ジャコポもそうだ。
密輸を生業とする荒くれものでありながら、ダンテスに対して示す飾らない優しさ。人間としての当たり前のふるまい。

それ故に、まず第一の仲間として声をかけた。


当たり前のこと。


それが人間はなかなか出来ない。
人はエゴイズムの極地で、事に当たったとき保身を思わぬ人はいない。誰もが自分が一番かわいいのだ。

当たり前の事が当たり前にできるとは、なんと優れた資質だろう。

モレル氏とその船員たちの深い信頼関係。そして静かに見守るイギリス紳士。

彼はモレル氏に三ヶ月の返済猶予を与え、邸をでる。行く宛を失った乗組員を誘って。