asagao’s blog

asagaoの観察日記。

モンテ・クリスト伯 読書メモ38

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「子供を出してから、扉を閉めるかな。」※1

モンテ・クリスト伯爵が呟く。

この呟きは、ダングラールを「醜い」と呟いた時と同様の面白さがある。

まるで、あらゆる出来事を映画でも見ているような客観的かつ俯瞰したもの言い。登場人物たちを手のひらに転がすような余裕を感じさせる。


案の定しっかりと部屋の扉を閉じる様子を見た伯爵は、それに気づかぬふりをする。

目を輝かせて、砒素や、毒に関する話題に夢中になるヴィルフォール夫人。

話題が本題に近づくにつれ、思い沈む様子。

モンテ・クリスト伯は、夫人の願望を見透かすように、望みの薬の処方箋を渡す約束をする。

延々と続く毒談義に辟易するころ、ようやくこの章が終わる。
最後の一文に、処方箋を届けてやったことが、投げるようにつづられている。

エドゥワールの小憎らしいこと。ずる賢く、傲慢。動物を虐待する描写。
そして、その子を溺愛し、厳しく叱る事の出来ない母親。
伯爵の息子への誉め言葉に、舞い上がるちっぽけな人格。

デュマは、どこかでこのような親子を見たことがあるのだろうか。それとも、読者の憎しみを煽る為の技法なのだろうか。

※1 アレクサンドル・デュマ山内義雄モンテ・クリスト伯岩波書店