asagao’s blog

日記と雑記、読書メモは個人的感想でネタバレ含みます。

モンテ・クリスト伯 読書メモ61 基本ネタバレ含みます。

カドルッス。裁きの時。
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カドルッスがアンドレア(べネデット)と密談するシーンから始まる一連の事件は、今までと趣が変わる。

この事件はモンテ・クリスト伯も予想外だった為、一瞬面食らう様子が面白い。

超越的な存在感の伯爵が、親近感を持って感じられる数少ない場面だ。

ここへ来てカドルッスの最後が描かれる訳だが、その前に一つ興味深い会話がある。

延々と続く盗賊二人の密談は、乱暴な言葉使いで嫌悪感を禁じ得ない。

会話では、盗賊が何を見ているかを分かりやすくまとめている。

伯爵の邸へ盗みに入ろうと目論むカドルッス。

ベル、犬、鍵、窓、階段、邸全体の間取り、使用人の部屋。そして最新の防犯設備の有無まで。

この頃に、すでに防犯設備の展覧会があったことにも驚く。

この会話の中で、モンテ・クリスト伯が決して窓の鎧戸を閉めないことが明かされた。
闇牢で苦しんだ彼が、鎧戸を閉めない事には説得力があり、また悲しみを感じる。
「夜でも空を見ていたいんだ!」※
と変わり者扱いをするべネデット。
夜でも空を見ていたい。
そう思わずにはいられない過去を確かに彼は生きている。
こういったささやかな、しかし人間心理をついた表現を物語に散りばめるのがデュマだ。

べネデットは結局カドルッスを騙し、忍び込むことを伯爵に匿名で伝える。

伯爵が待ち受ける邸へカドルッスは忍び込むことになるのだが、伯爵はそれがカドルッスとは知らない。

全てが計算ずくであるはずの物語が、ここで不規則に流れを変える。

それは運命であり、また、モンテ・クリスト伯の言葉で言えば、神の意思となる。

人間の計画など、簡単に打ち砕く何か。
目には見えない法則が神の意思として発露する。

アレクサンドル・デュマ作、山内義雄訳、モンテ・クリスト伯六、岩波書店