asagao’s blog

asagaoの観察日記。

モンテ・クリスト伯 読書メモ69

マルセイユの庭。
f:id:kazbot:20170527090722j:plain

真実を知ったアルベールが父を捨て家を出ることを察した伯爵は、当座の資金を用意する。

しかし、アルベールの性格から受取ることはないだろうと考えた伯爵は手紙をベルツッチオに託し、その決断をメルセデスに委ねる。

手紙に綴られた過去。
メルセデスのために用意された婚資。
それが、いまもマルセイユの小さな庭に埋められていること。
母を貧苦から守りたいアルベールと、息子にひもじい思いをさせたくない母。
互いを思いやる心に訴え、もしそれを受け取る事を拒むなら狭量だと揶揄する。
誠に、アルベールとメルセデスを知り尽くした伯爵ならではの言い回し。

メルセデスは、天を仰いで受け取ることをアルベールに告げる。

もし、メルセデスがフェルナンを拒んでいたら。

たった一人の人生を選んでいたとしたら。
おそらく伯爵はメルセデスを選んだだろうと思う。

月日がたち年老いたヒロインを選ぶというのは、物語としてはつまらないかもしれない。

しかし、この流れを読む限り伯爵のメルセデスに対する愛情は本物だった。

現にメルセデスの哀願を聞き入れ、フェルナンの息子でもあるアルベールの銃弾に倒れる事を選んだのだから。
死ぬという決意のもと、ただひとつ自身の尊厳を守るためにの遺言を残すだけにとどまった。

あのまま、アルベールが決闘を実行していたら、モンテ・クリスト伯はメルセデスへの愛に死んだ事になる。

このくだりはデュマによって考え抜かれた構成だと思う。
この決闘に関連する出来事が、伯爵の中でメルセデスへの想いに1つの結論を与えた。

メルセデスを愛したダンテスは死に、エデを愛するモンテ・クリスト伯が生まれたのではないだろうか。

これを、心変わりとは言えないだろう。
現にメルセデスは裏切った。事情はあれどこの事実は消えない。
しかし、その裏切りの恋人に命を捨てる覚悟を見せた伯爵には真実があった。
その行為により、この物語でいう「神」は伯爵の命を蘇生させた。

死の淵から思いもかけない形で、伯爵は蘇生する。

メルセデスへの愛の完結。

これが、この章の底に流れているものだと思う。