asagao’s blog

asagaoの観察日記。

モンテ・クリスト伯 読書メモ73

契約書。
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結婚の契約書への署名が行われる夜。
パリ社交界の華々しい人々が、ダングラール邸へと集まった。

壁面の金細工に反射する燭台の明かり。
笑いさざめく人々で満ちた広間。

目前の巨万の富に、気も狂わんばかりのアンドレア。
破産から逃れようと一縷の望みをかけるダングラール。
白い一輪の薔薇を髪に差した無感動な花嫁。
他人事の花嫁の母。


ここで面白いのが、デュマの観察眼が光る一文。

顔のまずい女ほどいけずうずうしく立ちふるまっているのだった。(中略)香りの高い薔薇のような娘がいたにはしても、極楽鳥の飾りのついた帽子をかぶった伯母などのうしろにかくれているのを、わざわざ探し出し、見つけなければならなかった。※

万国共通。
心根の醜さが容姿に現れる場合、富と地位で飾り立てても、嫌悪感を禁じ得ない。それは、生まれながらの美醜を越えた物だ。

人が心奪われるのは、心の美しさが滲み出る「しとやかさ」や「気品」であって、自意識過剰で傍若無人な振る舞いでは無いという事だろう。

しかし、そんな理想的な女性は常に屈強な母親や伯母の影に隠れており、探しだす必要があると言っている。

良き妻、良き恋人を求めるならば、探し出す努力を惜しんではならないというメッセージかもしれない。

確かに、モンテ・クリスト伯に登場するヒロインのエデやヴァランティーヌは、滅多に人前には現れない。
気品があり、自分の意志を持ち、ただ一人の人を一途に愛する。
そんな女性の存在を示唆しつつ、探し出す必要があると伝えているのだと思う。

そんな女性を妻に持つことが出来れば、幸福になれる。

当然、ダングラール夫人のように、夫の面前で不倫相手と語り合うような事はしない。

はたまた、ヴィルフォール夫人のように、遺産目当てに親族を毒殺するような事もない。

そして、メルセデスのように命がけの愛を信じる事が出来ず、心変わりするようなことも無いのだ。

どのような女性を愛し、誰を妻とするか。

男性が社会で実力を発揮できるかどうかは、実は伴侶によるものが大きい。

歴史上偉大な人物が、悪妻によって判断を誤り、失墜した例は枚挙に暇が無い。

逆に、賢い妻を持った事によって、優れた素質を開花させ、歴史に名を残した人物もいる。


身近な女性は、それほどまでに大きな影響力を持っている事を男性は知るべきだ。



さて、契約書への署名が着々と進む。
次はアンドレア。

そこまで、段取りが進んだところで、伯爵の策略が発動。

広間に悲鳴と、どよめきを起こしながら警部が入場。

アンドレアが脱獄囚であることが分かる。

※アレクサンドル・デュマ作、山内義雄訳、モンテ・クリスト伯六、岩波書店